【心理士が解説】言葉が増えないのはなぜ?発語を促すための関わり方と「共同注意」

ゆう
臨床心理士・公認心理師
児童発達領域の臨床心理士・公認心理師。
発達相談、保育園巡回、療育の心理士として経験を積んできました。
診断の有無にかかわらず500名以上のお子さんの発達を見守ってきた経験をもとに、発達の「どうして?」「どうする?」に答えていきます。

「周りの子はたくさん話しているのに、うちの子はまだ単語が出ない」とお悩みではありませんか。

言葉を言わせようとすると嫌がってしまい、関わり方に戸惑う保護者の方も少なくありません。

子どもの言葉が増えないときは、無理に言わせようとせず、親子で興味や体験を共有することが大切です。

この記事では、焦らずにコミュニケーションを楽しむためのヒントを、心理学の視点からわかりやすくお伝えします。

目次

子どもの言葉が増えない時期は、言葉を言わせることだけを目標にせず、安心してやりとりを楽しめる関係づくりを優先しましょう。

言葉が出ないと心配になり、つい大人が先回りして言葉を教えたくなるのはごく自然なことです。

しかし、言葉の練習ばかりを意識すると、子どもがプレッシャーを感じてしまうケースもあります。

まずは日常の中で「やりとりが楽しい」と感じられる関わりを重ねていきましょう。

子どもが発語を嫌がるときは、質問に答えること自体が負担になっている可能性があります。

「これ何?」「言ってみて」と繰り返し求められると、子どももテストされているような緊張感を抱きやすくなってしまうのです。

質問すること自体がいけないわけではありませんが、今は正解を言わせることよりも、やり取りの心地よさを味わうことが何より大切になります。

子どもの表情や仕草に寄り添いながら、自然なコミュニケーションを広げていきましょう。

言葉の発達を支える大切な基盤として、心理学では「共同注意」と呼ばれるやりとりが注目されています。

共同注意とは、子どもと大人が1つの対象に同時に注意を向け、その体験を共有することを指します。

たとえば、お散歩中に子どもが犬を見つめているとき、保護者も同じように犬を見て「ワンワンがいるね」と笑顔で声をかける場面を想像してみてください。

このとき子どもは、「大好きな人と一緒に同じものを見ている」という強い安心感を覚えます。

同時に、「ものには名前があるんだ」という学習の機会にもなっているのです。

こうした体験の共有こそが、周囲への関心や他者と通じ合う喜びを育てる第一歩となります。

声による言葉が出ていなくても、視線や指さし、表情を向け合えているなら、すでに立派なやりとりが成立しているといえるでしょう。

コミュニケーションは言葉のやりとりに限らず、身ぶりやアイコンタクトなど多彩な方法で行われています。

「あっちに行きたい」と指をさしたり、嬉しいときに顔を見合わせて笑ったりする行動も、豊かな自己表現の一つといえます。

発語の有無だけに縛られず、子どもが全身で発信しているサインを丁寧に受け止めてあげてくださいね。

日々の関わり方を少し見直すだけで、無理に発語を急かさずともコミュニケーションの土台を育めます。

特別な教材を用意する必要はなく、いつものお散歩や遊びの時間を活用するだけで十分です。

子どもが心地よくやりとりを楽しめるよう、3つの関わり方を生活に取り入れてみましょう。

子どもの見ているものに一緒に注目する

まずは、子どもが視線を向けているものに大人も目線を合わせることから始めてみてください。

大人が見てほしいものを無理に見せるのではなく、子どもの興味関心に大人が寄り添うことが大切です。

お部屋でおもちゃの車を動かしているなら「車が走っているね」、道端の花を見つめているなら「お花、きれいだね」と声をかけます。

同じ景色を共有するあたたかな時間が、親子の信頼感と言葉への関心を深めてくれます。

子どもの興味に合わせて、短い言葉で話しかける

言葉を届けるときは、今起きている出来事に合わせた短くシンプルなフレーズを添えるのが効果的です。

長文で複雑に説明するよりも、状況に直結した短い単語のほうが子どもの記憶に残りやすい傾向にあります。

たとえば、おやつを食べるときに「おいしいね」、ボールを投げたときに「ころころ転がったね」と状況をそのまま言葉にしてみましょう。

子どもがすぐに真似して話さなくても焦る必要はありません。体験と言葉が結びつく機会をのんびり積み重ねていくことがポイントです。

答えを求めず、伝え合う楽しさを大切にする

会話の場では、子どもに正解の返答を求めず、大人が気持ちを代弁して受け止める関わりを心がけましょう。

言葉を言わせようと身構えるのをやめると、子どももプレッシャーを感じずにのびのびと過ごせるようになります。

子どもが指をさしたら「あっちにバスがいたね」、声を出したら「おもしろいね」と笑顔で応えてあげてください。

言葉そのものの正確さよりも、通じ合えたときの嬉しさを共有することが、発語への前向きな意欲につながります。

言葉を増やそうと意識するあまり、無意識のうちに子どもを緊張させてしまう関わりには注意が必要です。

親の焦りや期待がプレッシャーとして伝わると、子どもがやりとりそのものを避けてしまう場合があります。

子どもの安心感を守るために、日頃の接し方で心がけておきたいポイントを整理しておきましょう。

「これは何?」と繰り返し質問しすぎる

日常会話の中で、「これは何?」「言ってみて」と質問攻めにする頻度を少し減らしてみましょう。

大人は会話のきっかけのつもりでも、頻繁に質問すると子どもにとってはテストのように感じられて気後れしてしまうことがあります。

質問を完全にゼロにする必要はありませんが、「赤くて可愛いリンゴだね」と大人から実況するように語りかけるのがおすすめです。

問い詰める形を避けることで、子どもはリラックスしてやりとりの輪に入ってこられます。

子どもが言葉を発することだけをゴールにする

関わりのゴールを「子どもが発語したかどうか」という結果だけに設定しないことも肝心です。

言葉の発達は目に見えない内面でじっくり蓄積されていくものであり、表面的な発語だけが成長の証ではありません。

声が出なくても、一緒に同じものを見て微笑み合えた時間は、子どもの心にとってかけがえのない栄養になります。

すぐに結果を求めようとせず、日々の穏やかなコミュニケーションの積み重ねそのものを肯定してみましょう。

家庭での関わりを工夫しても不安が消えないときは、ひとりで悩みを抱え込まず専門機関を頼ることを検討してみましょう。

言葉の発達には個人差がある一方で、聞こえや環境、全体的な発達のバランスなど多様な背景が関係している場合もあります。

専門家に相談することは決して大げさなことではなく、親子の笑顔を守るための自然な選択肢の一つです。

日頃の様子に気がかりな点があるときは、自治体の窓口やかかりつけの小児科へ気軽に相談してみましょう。

身近な相談窓口としては、地域の子育て支援センターや保健センター、小児科クリニックなどが挙げられます。

名称や実施している相談事業は地域ごとに異なりますが、定期健診の場などを利用して悩みを打ち明けることも可能です。

専門職に客観的な様子を見てもらうだけでも、家庭での接し方のヒントが得られて肩の荷が軽くなりますよ。

子どもの言葉を育む土台は、親子で心地よい時間を共有する日常の中で作られていきます。

・言葉を言わせることだけを目標にしない
・子どもの興味に一緒に注目する
・「共同注意」を大切にする
・日常の体験に短い言葉を添え、やりとりを楽しむ
・心配なことがあれば、ひとりで抱え込まず専門機関に相談する

焦る気持ちが湧いてきたときこそ、深呼吸をして、お子さんが見つめている世界を一緒に覗いてみてください。

「ワンワンがいるね」「楽しいね」と笑顔を交わし合う小さな関わりが、やがて豊かなコミュニケーションの花を咲かせていきますよ。

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