発達障害は兄弟ともに多い?ASD・ADHDの遺伝や兄弟で違いが出る理由を解説

ADHD

「上の子に発達障害の特性があるけれど、下の子も同じようになるのかな」「兄弟で落ち着きのなさやこだわりが似ている気がする」と、子育ての中で不安を感じていませんか。

ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)と遺伝の関係が気になり、一人で悩みを抱えてしまう保護者の方は少なくありません。

この記事では、兄弟における発達障害の現れ方や遺伝との関係、特性に違いが出る理由について、臨床経験を持つ心理士の視点からわかりやすく解説します。

  1. 発達障害は兄弟ともに多い?まず知っておきたいこと
    1. 兄弟そろって発達障害の診断を受けるケースはある
    2. 上の子が発達障害でも、下の子が必ずそうなるわけではない
  2. ASD・ADHDは兄弟で同じになる?遺伝との関係
    1. 発達障害には遺伝的な要因が関係する部分もある
    2. 遺伝するからといって必ず発達障害になるわけではない
    3. 同じ兄弟でも発達特性の現れ方は異なる
  3. なぜ兄弟で「診断が付く・付かない」が分かれるの?
    1. 一人ひとり生まれ持った特性が異なる
    2. 年齢や成長によって気になる行動は変わる
    3. 保育園などの集団生活で特性が目立つこともある
  4. 上の子に発達障害があると、下の子にも早く気づける?
    1. 上の子の発達を知っているからこそ気づける変化がある
    2. 兄弟との比較は「判定」ではなく「気づき」のために
    3. 「上の子と違う」より「この子が困っていること」に目を向ける
  5. 兄弟の発達が気になるときに見るポイント5つ
    1. 1.園での集団生活や友達との関わり
    2. 2.名前を呼ばれたときの反応
    3. 3.会話や意思の伝え方
    4. 4.予定変更への対応やこだわり
    5. 5.落ち着きのなさや衝動的な行動
  6. 兄弟の発達が気になったら、どこに相談すればいい?
    1. まずは保育園・幼稚園の先生に相談する
    2. 自治体の発達相談・保健センターを利用する
    3. 必要に応じて医療機関や専門機関につなげる
  7. まとめ|兄弟でも発達特性は一人ひとり違う。まずは「気づくこと」から

兄弟を育てていると、「上の子に続いて下の子も発達障害と診断されるのでは」と心配になる場面があるかもしれません。

まずは、兄弟における発達障害の現状について、知っておきたい基本的な知識を整理しておきましょう。

兄弟そろって発達障害の診断を受けるケースはある

ご兄弟そろって発達障害の診断を受けるケースは、実際の臨床現場や発達相談の場面でも見られます。

兄弟は遺伝的な背景や生活環境の一部を共有しているため、生まれ持った特性や行動の傾向が似る場合があるからです。

例えば、お兄ちゃんがASDの診断を受けていて、弟さんも同じように強いこだわりやコミュニケーションの難しさを抱えているという事例は珍しくありません。

このように兄弟で診断が重なるケースはありますが、それはけっして特別なことではなく、保護者の方の育て方やしつけが原因ではないと理解しておくことが大切です。

上の子が発達障害でも、下の子が必ずそうなるわけではない

上の子に発達障害があるからといって、下の子も必ず発達障害になるわけではありません。

発達障害の現れ方には多様な要因が複雑に関係しており、兄弟であっても遺伝的な組み合わせや脳機能のバランスは一人ひとり異なるためです。

実際の相談場面でも、上の子には慎重でマイペースなASDの傾向が見られる一方、下の子は切り替えが早く集団活動にもスムーズに馴染んでいるというご家庭はたくさんあります。

「上の子が発達障害だから下の子もきっと……」と思い詰めず、まずは下の子自身の個性や成長のペースを丁寧に見守っていきましょう。

「発達障害は遺伝するの?」という疑問は、多くの保護者の方が抱える切実な不安の一つです。

ASDやADHDといった発達障害と遺伝の関係について、正しく理解しておきましょう。

発達障害には遺伝的な要因が関係する部分もある

ASDやADHDなどの発達障害には、遺伝的な要因が深く関わっていると考えられています。

近年の医学研究においても、脳の機能発達や神経伝達物質の働きに関わる遺伝的背景が、特性の現れやすさに影響を与えていることが分かってきました。

血縁関係が近いほど発達特性の類似度が高まる傾向があり、兄弟間で似たような行動特性が見られる背景には、こうした遺伝的要因が関与しています。

ただし、これは「親から子へそのまま受け継がれる単一の遺伝病」という単純なものではありません。

遺伝するからといって必ず発達障害になるわけではない

遺伝的な要因が関係しているからといって、兄弟全員が必ず発達障害になるわけではありません。

発達障害は一つの遺伝子だけで決まるものではなく、多数の遺伝的要因に加えて、胎生期の環境や出生後の生育環境など、様々な要因が複雑に相互作用して発現すると考えられています。

そのため、同じ両親から生まれた兄弟であっても、受け継ぐ遺伝子の組み合わせはそれぞれ異なります。

遺伝的な素因を持っていたとしても、それが生活上の大きな困りごととして現れるかどうかは、子ども一人ひとりの状況によって大きく分かれるのです。

同じ兄弟でも発達特性の現れ方は異なる

同じ兄弟であっても、発達特性の種類や現れ方は大きく異なる場合があります。

たとえば、兄は「落ち着きのなさや衝動性」が目立つADHDタイプであるのに対し、妹は「特定の物事への強いこだわりや対人関係の苦手さ」が目立つASDタイプであるケースも珍しくありません。

また、同じASDであっても、上の子は感覚過敏が強く音に敏感である一方、下の子は言葉のコミュニケーションのずれが中心であるなど、困りごとの中身は千差万別です。

「兄弟だから同じ症状が出るはずだ」と一括りにせず、それぞれの特性に合わせた見守りや支援が必要となります。

同じ環境で育っている兄弟なのに、一方は診断が付き、もう一方は診断が付かないというケースもよく見られます。

なぜ兄弟間で診断の有無が分かれるのか、その理由を見ていきましょう。

一人ひとり生まれ持った特性が異なる

兄弟であっても、生まれ持った気質や認知の特性、脳機能の凸凹の度合いは一人ひとり異なります。

発達障害の特性は「有るか無いか」の0か100かではなく、グラデーションのように連続しているもの(スペクトラム)だからです。

日常生活に大きな支障をきたすほど困りごとが重なっていれば診断基準を満たしますが、特性がマイルドで本人が適応できていれば診断は付きません。

兄弟で少し似た傾向があっても、生活における困難の度合いが異なるため、診断の有無が分かれることになります。

年齢や成長によって気になる行動は変わる

子どもの年齢や発達段階によって、周囲から見た気になる行動の現れ方は変化します。

年齢が低いうちは自由に行動できるため目立たなかった特性が、就学前後の集団行動や学習が始まる時期になって初めて顕在化することも多々あります。

幼児期は「元気で活発な子」と見られていた子どもが、小学校入学後に長時間の着席やルール遵守を求められて困りごとが表面化するケースが例としてあげられるでしょう。

疑いすぎるのも望ましくありませんが、下の子がまだ幼い場合、単に成長段階として目立っていないだけという可能性も視野に入れておく必要があります。

保育園などの集団生活で特性が目立つこともある

園や学校などの集団生活における環境の違いによっても、特性の目立ちやすさは大きく左右されます。

家庭内では保護者が子どものペースに合わせて柔軟に対応できるため、本人の苦手さが表面化しにくい傾向があります。

一方で、保育園では、一斉行動や集団遊び、音や刺激の多い教室など、刺激が多い環境に直面します。そこで初めてパニックや孤立といった困りごとが生じるお子さんも多いのです。

クラスの人数や先生の関わり方、園の方針といった周囲の環境によっても、診断につながるかどうかの見え方が変わってきます。

上の子の育児を通じて発達障害の特性を知っている保護者の方は、下の子の小さな変化にも敏感になりやすい傾向があります。

その気づきを、どのように前向きな関わりに変えていけばよいのでしょうか。

上の子の発達を知っているからこそ気づける変化がある

上の子の成長を見守ってきた経験があるからこそ、下の子の小さな発達のサインにいち早く気づけるという強みがあります。

視線が合いにくい、言葉の遅れがある、切り替えが苦手といった特性の現れ方をあらかじめ知っているためです。

早期に子どもの特性に気づくことができれば、無理な叱責を避け、分かりやすい声かけや環境調整などの適切なサポートを早くからスタートできます。

これは上の子を大切に育ててきた保護者の方だからこそ得られた、大きな知見といえます。

兄弟との比較は「判定」ではなく「気づき」のために

兄弟を比べる視点は、発達障害かどうかを白黒判定するためではなく、成長のヒントを得るための「気づき」として活用しましょう。

「上の子はこの時期にもうできていたのに、下の子はできないから異常なのでは」と優劣で捉えてしまうと、保護者の方自身が精神的に追い詰められてしまいます。

発達のスピードや得意・不得意は定型発達の子どもであっても大きな個人差があります。

比較はあくまで「この子は言葉よりも視覚的な指示が届きやすいタイプかもしれない」と、関わり方の手がかりを見つけるために役立ててみてくださいね。

「上の子と違う」より「この子が困っていること」に目を向ける

診断の有無や上の子との違いにとらわれるのではなく、「今、目の前の子ども自身が何に困っているか」に視点を向けましょう。

支援や療育の本質は、病名や診断名を付けることではなく、子どもが日常を心地よく過ごせるように手助けすることです。

たとえ診断が付かなくても、園生活で不安が強かったり集団行動に馴染めず苦しんでいたりするなら、具体的なサポートが必要となります。

「上の子と似ているか」よりも、「この子が笑顔で過ごすためにどんな工夫ができるか」を大切にしていきましょう。

家庭や園での生活の中で、下の子の発達が気になったときは、以下の5つのポイントに注目して観察してみましょう。

ただし、これらの行動が一つ当てはまるからといって、すぐに発達障害と判断するものではありません。あくまでお子さんの様子を丁寧に理解するための観察の目安として参考にしてくださいね。

1.園での集団生活や友達との関わり

保育園や幼稚園での自由遊びの時間に、一人遊びばかりを好んでいないか、友達とのトラブルが多くないかを確認します。

集団での一斉指示に従うのが難しい、順番を待つことが極端に苦手であるなど、集団生活の中で本人が過ごしにくさを感じていないかを見ておきましょう。

2.名前を呼ばれたときの反応

少し離れた場所から名前を呼んだとき、視線が合うか、あるいは反応して振り返るかを確認します。

何かに夢中になっていると周囲の声が全く耳に入らない様子が見られる場合、単なる集中力の高さなのか、呼びかけへの応答の難しさなのかを様子を見ながら把握していきます。

3.会話や意思の伝え方

言葉の発達スピードだけでなく、「自分の要求や気持ちを言葉で伝えられているか」というコミュニケーションの双方向性を見てみましょう。

オウム返しが極端に多い、一方的に自分の好きなことだけを話し続ける、身振り手振りが少ないなど、やりとりのキャッチボールのスムーズさを観察します。

4.予定変更への対応やこだわり

日課の順番が変わったり、いつもの道と違うコースを通ったりしたときに、激しいパニックや強い抵抗を起こさないかを見ます。

物の配置や着る服への強いこだわり、切り替えに非常に長い時間がかかるなど、変化に対する柔軟性の度合いをチェックしてみましょう。

5.落ち着きのなさや衝動的な行動

危険な場所に迷わず飛び出してしまう、座っていなければならない場面でじっとしていられないなど、行動のコントロール力を観察します。

幼児期特有の好奇心による活発さと、危険の予測ができずに衝動的に動いてしまうことの違いに意識を向けてみてください。

発達障害の子の行動が「幼く見える」のはなぜ?精神年齢ではなく発達の凸凹を理解しよう
「同年代のお友達と比べて、うちの子はどこか幼い気がする……」「言葉はたくさん知っているのに、着替えや片付けがうまくできない」未就学児や小学校低学年のお子さんを育てている保護者の方のなかには、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょ…

「もしかして発達障害かも」と不安が募ったときは、保護者の方だけで抱え込まず、身近な専門機関や専門職に相談してみることが大切です。

相談は診断を受けるためだけのものではなく、日々の育て方や関わり方のヒントを得るための場所でもあります。

まずは保育園・幼稚園の先生に相談する

最初の一歩として、園での普段の様子を一番よく知っている担任の先生に相談してみるのがおすすめです。

家庭では見えにくい集団生活での振る舞いや、同年代の子どもたちと比較した客観的な様子を教えてもらうと、お子さんの全体像が見えてきます。

「家ではこうなのですが、園ではいかがですか」と情報交換をすることで、家庭と園とで一貫したサポート体制を築きやすくなるメリットもありますよ。

自治体の発達相談・保健センターを利用する

各市区町村の保健センターや子ども家庭支援センター、発達相談窓口も気軽に活用できる相談先です。

保健師や公認心理師、臨床心理士などの専門職が無料で個別の面談に応じてくれ、子どもの発達段階に応じた具体的な助言をしてくれます。

「病院を受診するほどか迷っている」「少し気になることがある」という段階でも大丈夫です。

「気になったとき」に相談先を利用してみてくださいね。

必要に応じて医療機関や専門機関につなげる

相談を重ねる中でより詳しい検査や専門的な療育が必要だと感じた場合は、小児神経科や児童精神科などの医療機関を検討しましょう。

医師による医学的な評価や診断を受けることで、児童発達支援などの療育サービスを利用するための受給者証の申請もスムーズに進みます。

専門機関への受診は子どもの将来を狭めるものではなく、子どもが自分の特性と上手に付き合いながら自信を持って育つための環境を整える大切な一歩です。

兄弟であっても発達障害の診断の有無が分かれることは珍しくなく、遺伝的な素因があっても必ず同じ特性が現れるわけではありません。

兄弟を比較して優劣をつけたり不安を抱え込んだりするのではなく、一人ひとりの子どもの「困りごと」に目を向けることが何よりも重要です。

もし日々の生活の中で気になる場面があれば、まずは園の先生や自治体の相談窓口など、身近な専門家に気軽に相談してみてくださいね。

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